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災害研究家 金子富夫コラム

まえがき

地震災害に関する情報は、様々な防災関係機関から発信されていますが、ここでは数多くの被害現場を体験し、“何としても助けたい”という思いを地域住民の方々に実践し、そこで得た経験を情報収集したものです。

これらの提言は、元東京消防庁消防官で、現在、災害研究家の防災士でもある金子富夫氏の著述「首都直下を迎え撃つ秘策・地域社会の命を守る最善の努力を!」の協力によるものです。

【A 地震災害】

日本政府や東京都が一番懸念している地震は「東京湾北部地震」である。既に安政江戸地震から150年以上も経っていることから、その危険性を重要視している。東京は国内はもとより世界の政治経済の中枢であり、その発生は世界的に大きな影響を与え、深刻な事態も生じさせてしまう。

1.地震発生の時に必ず生死を分けるポイントがある
阪神・淡路大震災の発生時間は、午前5時46分。住民のほとんどは、布団の中で眠りについていた時間であった。大きな揺れで寝込みを襲われ、建物の下敷きとなり、6,343人が命を落とした。
寝ていることと、寝ている場所が生死の分かれ目となり、熟睡していれば間違いなく死に至る。起きているか、寝ているのかが生死の分かれ目になってしまう。
築30年以上の木造建物は、耐震補強をする必要があり、また、室内の家具・書棚・机・椅子などが勢いよく飛んでくるので、それらを固定することが大切である。

木密地区は建物が倒壊し、逃げ遅れて下敷きになったり、逃げ惑う人々が混乱を生じ、多くの人命を失うことになってしまう。

対策:耐震シェルター 耐震ベッド

2.大地震は頭上からやってくる
世界中で日本の空ほど醜い空はない。殆どの国や都市では、電柱・電線は地中化されているのに、日本の空は電柱・電線が縦横無尽に都市上空をクモの巣のように張り巡らされている。
つまりは、大地震によって日常生活に溶け込んでいる頭上の電柱・電線・トランス・電話線・街路灯が落下してくる恐怖である。
普通の生活では、歩行方向や道路を見ながら行動しているので、上を見ることは殆どない。
しかし、大きな揺れに襲われると、人の動きは瞬間止まってしまい、その時に頭上から地震がやってくるのである。
願わくば、この先、何十年かかろうとも都市環境整備として、電柱・電線のない清々しい青空を見上げたいものだ。
その他にも、都内の拠点駅周辺にも多くの高層ビルが立ち並び、ガラス張りでデザインされた巨大な人形ケースの様な建物が多くある。
建築ガラス・建物突起物・工事現場・立体駐車場・各種標識・看板等やショーウィンドウ・ベランダ・塔屋・アンテナ・瓦・解体中の建築資材等の落下飛散で危険なものを挙げればきりがない。

対策:ヘルメット(携帯用ヘルメット) 防災ずきん

3.道路幅が突然、魔法をかけられたように無くなってしまう
東京には約270万棟の建物が建っている。23区は170万棟、多摩地区は99万棟である。
過去、地震被害の現場に行くと、いつもの光景であるが、大通り以外は建物が倒れこんで、殆どの道が瓦礫の山で、通ることはできない。地割れ、段差で通行できないところも多くある。生活道路として、今の今まで使っていた道路がわずか1分程度の揺れで魔法をかけられたように、その様相が変わってしまう。そのため、緊急車両は通れなくなる。
東京では、関東大震災体験者は殆どいない。従って、体験談を聞こうにも難しい環境にあり、都民的には風化しつつある。地震の恐怖を忘れているというより、怖さを知らないといったところだろう。

対策:防災マップ

4.春夏秋冬により、生死に大きな差がでる
北海道南西沖地震は真夏、阪神・淡路地震は真冬、新潟中越地震は初秋、関東大震災は夏の終わり、東北大震災は春の寒いうちなど、季節に伴う山間地、海辺など、被災している季節環境がそれぞれに人命に厳しく影響している。

対策:季節に応じた防災用品

5.東京23区は危険物倉庫群
危険物を積んでいる車両・危険物の貯蔵施設・工場・病院・大学に貯蔵されている放射性同位元素・化学薬品など、都内には都民の知らないところに数多くの危険物があることを認識してほしい。
日頃、乗っている乗用車には常に数十リットルのガソリン燃料が積載されている。殆どの家が自家用車をもっているので、大げさに言えば都内が面でガソリンの倉庫状態である。また、都内へは関東周辺からの流入車両が毎日数百万台もあり、超過密状態になっている。交通事故や工事で渋滞はすぐに2キロ~3キロとなり、少しでもコントロールが効かなくなるとパニック寸前である。
まして、信号機が制御不能となると、身動きが取れにくくなり、秩序がなくなり、完全なパニック状態となる恐れがある。
都内には多くのタンクローリー車が行き来しているが、実際にこれらの車両が転倒してタンクローリー火災が発生している。昨年も首都高速5号線で走行中、壁に激突し、火災を起こし、高速道路に損害を与えた。
一般車両の火災実験では、車を数珠つなぎに並べて点火すると、次から次へと延焼していくことが分かり、まるで導火線に火をつけた様な悲しい光景となった。
また、危険物の大量貯蔵施設は、その機能から、海浜地区や河川周辺に多くあり、近隣住民への不安も広がっている。
そして、家庭内においても、薬品やボンベ類が必ず存在する。ライター、化粧品、殺虫剤、コンロのボンベ、調理用のプロパンボンベ等々の危険物が多くあり、揺れがきて建物がつぶれた後にスパークなどの原因で火災が発生すれば、爆発し、延焼拡大につながる恐れもある。
都内は世界の各都市と比較しても格段に密集していて、木造建物が未だ半数以上を有している状況下で、都民は世界で最も恐ろしい危険物倉庫群の中に生活していることを絶対に忘れてはならない。

対策:消火器 防塵マスク

6.スーパー、コンビニは一瞬で空っぽ 都民への備蓄の水、食料は届かない
阪神・淡路大震災の時はタクシーで大阪市内を2時間走り、スーパーやコンビニの商品状況を何店舗か見て回ったが、全ての店で食料品はなくなっていた。普段では全く考えられないことである。
人は危険を感じると一斉に同じ行動に走ることが分かった。そこには人間の本質が見えてくる。
そこで先ず問題となるのは、「非常食のあり方」である。
災害発生現場の食料事情と、日常の食料確保・備蓄のあり方について述べてみる。
最も大切なのは「水」である。
国民全体にいえることだが、何かあると行政機関が何とかしてくれると思いこんでいるけど、東京に限ってはそうは行かない。1,200万人も住んでいる現状から、都民の中には「水」や「食料」が口に入らずに亡くなっていく人が発生すると思う。
かつてアメリカのニューオリンズを襲った「台風カトリーナ」の被害により数千人が亡くなり、さらに見えない裏側で多くの市民へ食料が届かなく、また、発見に至らず多くの人々が亡くなっている事実が報道された。
東京は大き過ぎて人々が何処にいるか知る由もない。粗雑・疎遠の地域社会になっていて、被災すると食料が受け取ることができない人以外には非常食は届かないのである。東京都も国も、全ての住民に対応できるよう備蓄する計画であるが、被災者に届けることは無理である。
家屋を失った被災者が仮に都内で400万人出たとしよう。1日1食にしても毎日400万食分を全国から調達することは不可能である。北海道から毎日50万食、近畿から80万食、九州から30万食分調達できたとしても長くは続かない。自分たちの地域が食糧不足に陥ってしまう政治的な問題に発展してしまうからである。
東京都は指導として水を1人1日3ℓ、食料を3日分備蓄するようにと条例を施行したが、果たして、わずか3日分程度でいいのか、最低でも14日間程度は必要であろう。
東京は6,000店舗ものスーパーやコンビニがある。在庫なしの流通システムで経営しているため、いざという時は商品が間に合わない。
日常食の備蓄が一番である。即席ラーメン、真空パックもの、レトルト食品などは賞味期間は1年程度のものはいくらでもある。
在庫して、食事をする習慣をつければ非常食対策は何も際立ってやることはないと思う。

対策:水 食料

7.トイレは人の癒し所、「我慢はできない」衛生パニック
阪神・淡路大震災の時は、被災地のトイレ事情は苦痛な事態であった。全ての人々が毎日行う行為であるため、役所・学校・公園など何処でも糞尿が山盛り状態で処理不能な状況であった。トイレの数が限られている為に尿意を催してしまえば我慢できなくなり、所構わず使用不能のトイレでも使用してしまう。
東京23区では850万人が暮らしているが、公共施設・公園の数には限りがあり、対応はできない。従って、一人一人が自らのトイレを準備し、備えていることが災害発生時の大切な課題である。

対策:簡易トイレ テント式トイレ便座

8.高層ビルパニック
住宅・オフィスが益々タワー化して今や100メートル級は当たり前となっている。耐震建築で倒壊はしないことになっているが、30階40階以上での揺れは2m~3mの振幅で、生きた心地はしないのが現実である。エレベーターが停止し、高層難民が発生し、高い階の人は地上へ降りることは難しくなり、特に高齢者・幼児・障害者は「死」につながることにもなりかねない。

対策:備蓄品

9.ガラスと火の粉の雨には傘は役立たず
2005年の福岡県西方沖地震で市内ビルのガラスの破片が雨のように通行人の頭上に降ってきた。関東大震災は火災による「火の粉」の恐怖が記録に残っている。小学校などでは「防災頭巾」を熱さ避け・火の粉避け・落下物避け用に児童に持たせ、地震の時に被らせるよう指導している。
火災時は地域が面で燃えている時、想像を超える大量の「火の粉」が頭上に降り注いでくる。髪の毛は油分があり、一瞬で燃えてしまう。
逃げ惑う避難者に容赦なく火の粉が降り注ぐので、防災頭巾を被っていると丸坊主になって火傷をおってしまうのである。
ガラスの破片や火の粉の大雨が揺れとともに空から降ってくるこのことを、肝に命じることは重要である。

対策:ヘルメット 防災頭巾

10.携帯・パソコンの不通が招くパニック
日本国中の携帯は約一億台、家庭用パソコンは約3千万台である。今や携帯、パソコンは生活の為の必須となっている。そんな過密過剰な情報の環境下で大きな揺れに襲われて、その瞬間から誰にも全く連絡がとれなくなってしまう。若者は一体どのような精神状態になってしまうのだろうか。新しい二次災害として通信パニックが反社会的行動に進まないよう祈るばかりである。
通信不能は全社・個人の固定電話も同様である。この場合、電源確保が可能な蓄電池・自家発電などを備えておく必要がある。

対策:自家発電装置

11.非日常的な行動が被災生活を支える
一瞬にして野山に放たれたと思え。自然回帰だ。
①食糧は当面、備蓄された非常食の配給
②避難所では嗜好品は支給されない(酒・タバコ・つまみなど)
③水は行政機関から毎日給水
④通信手段は徒歩・自転車・バイクなど
⑤運搬はリヤカー・自転車・バイクなど
⑥エレベーター・エスカレーターは徒歩で
⑦照明は燃焼(樹木・廃材)、懐中電灯・ローソクなど
⑧暖房は燃焼(樹木・廃材)、カイロ・厚着・新聞紙・段ボールなど
上記のような非日常的生活が強いられる。大地震に襲われたならば「野山」に突然にして放たれたと思えばよい。

12.揺れは1分間、最初の15秒が
鉄筋建物は築40年以上、木造建物は築30年以上の建造物については耐震補強する必要がある。大きなたて揺れが15秒間続くと倒壊の恐れがあり、直ぐに外へ避難した方がよいが、全ての人々が対応できるものではない。日常的に寝る前に枕元に普段着の他にスリッパ・手袋・運動靴を用意しておくべきである。また、子供や高齢者の居場所には注意を払ってあげ、大きな家具はしっかりと固定することが必要である。

対策:耐震補強

13.ライフラインは復旧しない 東京23区では数ヶ月以上
阪神・淡路大震災では、ライフラインの復旧に上水道は90日、下水道は103日、電力は6日、ガスは83日、電話は15日であった。
東京都の被害想定では復旧日数は上水道は31日、ガスは57日、電気は7日を想定している。都内には約440万世帯の家族が存在している。ライフラインは重要な生命線である。都内では復旧作業するにしても業者そのものが被災している為、すぐにとりかかれるか疑問である。機械・作業員・材料の調達はどれくらい時間が掛かるか分からない。加えて、幹線道路や入り組んだ路地などが不通となり、復旧日数の算定は非常に難しい。最悪の場合、数ヶ月の被災生活を念頭におかなければならない。

対策:備蓄

14.関東大震災から90年、太平洋戦争から67年。都民は長い間、恐怖におののく生活体験を共有していない

これまで、東京都民は震度5強の地震までは経験しているが、震度6~7の地震は経験していない。今、日本政府や東京都が一番恐れていることは「東京湾北部地震」の発生である。157年前の1855年に隅田川河口直下で震度7の「安政江戸地震」が発生している。概ね、150年周期で東京を襲っている。その周期を既に超えている為、発生が懸念されている。関東大震災では10万人、太平洋戦争では東京大空襲で一夜にして都民10万人が焼死してしまったのである。また、少し時代を遡ると、江戸の三大火・明暦の大火・昭和の大火・文化の大火などで10万人以上の死者を出している。明暦の大火では、江戸の殆どの建物が焼かれ、10万人が焼死している。
阪神・淡路大震災では死者6,000人を超え、その他の最近の地震でも数十人が亡くなっているが、東京では過去の歴史的災害などで10万人単位が亡くなっている。都民は長い間、外力(地震・戦争・テロなど)を経験していない。長い間、怖さを共有していない。その発生が都民の生き方をどのようにして変えてしまうのか、全く分からない。地域社会が一致協力して、生き抜いていくしかないのである。

15.都民の防災訓練を見直そう
東京都は、都民への震災対策として「防災訓練」の実施を呼び掛けている。これまで、東京消防庁などの訓練実施の記録を見てみると1年間に約12,000件、実施されて、訓練参加人数は1,000,000人を超えている。
①身体防護訓練
起震車などを体験して、頭上の安全を確認する
②出火防止訓練
ガス台、電気器具のスイッチ切りなどの瞬間の扱い
③初期消火訓練
消火器・消化バケツ・簡易ポンプなどによる早期の消化
④通報連絡訓練
119番通報のかけ方
⑤避難訓練
煙ハウスで煙体験をして避難時の環境を認識する
⑥救出・救助訓練
のこぎり・バール・ジャッキを使い、建物の下から助け出す
⑦応急救護訓練
包帯法・止血法・担架の搬送方法を体験する

訓練方法は、国や都の計画に基づくもので、東京消防庁・役所が都民指導にあたっているものだが、これらの訓練は、ここ30年変わっていない。都市化が急激に進み、高層化・地下化で複雑化している東京で、果たしてこれで充分か、疑問である。
特に、初期消火訓練、救出・救助訓練、応急救護訓練については早期の見直しが要求される。

16.災害情報とは何か
①何処へ避難すればよいか。
②水や食料は、何処へ行けば手に入るか。
③行政はどんな支援をしてくれるか
④その支援を受けるには、どうすればよいか。
⑤電気・ガス・水道・交通機関などのライフラインの復旧状況はどうか。
⑥行方や安否が心配な肉親や知人の情報は、

以上の情報を平常時から意識して生活することが必要となる。

【B 首都圏直下型地震(東京湾北部地震・立川断層地震・元禄千葉沖地震等)被害対策

1.地震防災対策強化地域制定会
中央防災会議が発表している首都圏直下型地震のマグニチュード7クラスの揺れの被害想定は、かなりゆるく、国家の存亡にかかわる被害が発生すると、地震防災対策強化地域制定会元会長の溝上恵氏(東大名誉教授)は語っている。政治・経済・行政が大打撃を受け、世界のマーケットも大きく揺さぶられる。
首都圏では、元禄地震(M8.2 1703年)や大正の関東大震災(M7.9 1923年)のような巨大地震が200年~300年間隔で起きている。
元禄と大正の間の地震活動を見ると、静穏期と活動期に分かれる。現時点は、地震の活動が盛んになる切り替え時とみられ、M7クラスの地震が発生する可能性が大である。
避難者も350万人~460万人が想定され、行政だけでは不可能である。瓦礫の発生も3,800万トンとすさまじい量となり、経済損失額は112兆円とも言われている。
また、東海・東南海・南海地震は100~150間隔で必ず起きる。三つが連動した場合は、強烈な揺れと巨大津波が襲うことになる。
東海地震で異常な現象が捉えられた場合には、それが大規模な地震に結びつく前兆現象と関連するかどうかを緊急に判断するため、我国の地震学研究者の第一人者6名からなる地震防災対策強化地域判定会(阿部勝征会長 東京大学名誉教授)を開催し、データの検討を行う。判定会での検討結果を受け、気象庁長官が「もうすぐ東海地震が起きそうだ」と判断した場合、ただちに長官から内閣総理大臣へ「地震予知情報」として報告されることになっている。

2.東京都防災会議「首都直下型地震等による東京の被害想定」
東京都は、東日本大震災を踏まえ、平成18年5月に公表した「首都直下地震による東京の被害想定」を全面的に見直すこととし、東京都防災会議の地震部会において検討を進めてきた。

「東京湾北部地震被害想定(2004年12月現在)」
■東京の人口(平成23年1月1日現在)  12,146,745人
・23区人口               9,007,407人
・世帯数                 4,547,435戸
■東京の建物
・全棟数                 2,700,862棟
・23区                  1,711,914棟
1.経済損失:112兆円
2.死者:13,000人
3.倒壊・消失家屋:85万棟(消失家屋65万棟 77%)
4.避難者:700万人
5.帰宅困難者:650万人
6.瓦礫発生量:9,600万トン
7.負傷者数:210,000人
8.重傷者数:37,000人
9.ライフライン
①電力:160万棟
②上下水道:1,100万人
③ガス:120万棟
④通信:110万回線

政府が出した被害想定は余りにも概算過ぎて、数量の根拠に乏しい。その数量は、かつて経験したことのない数値として、その恐ろしさ・怖さを表している。この被害想定は、定量的想定のみで、想定できないものについては含まれていないのである。これら以外に、下記のような被害シナリオが存在する。

①長周期地震動による超高層ビルの被災
②余震の発生や大量の降雨による二次災害の発生
③街路の道路閉塞による消火活動や避難活動の阻害
④鉄道事故で対向列車との衝突が発生
⑤大規模な集客施設での火災発生、デマ、流言をきっかけとしたパニック
⑥一部の繁華街等での治安悪化
⑦株価・金利等の変動による経済活動への影響
⑧地下街の迷路化による混乱
⑨駅構内・駅地下の乗降客の混乱

それに、人口集中地区では、右往左往する群衆でパニック状態となり、「避難地獄」が生じて、想像を絶する生き地獄を見るかもしれない。この様な状態の中で、冷静に流れに惑わされずに深く息を吸い、まずは心の安定をはかることが生き延びる条件となってくる。

3.地震発生から身を守る明確な10のポイント(東京消防庁作成)
地震発生に伴う身の安全確保、地震後の行動を分かりやすく端的に示してまとめたものがある。安全確保のための指導書が数多く出回っているが、このA4判1枚で十分である。

【大きく揺れた時の行動】
(1)グラッときたら身の安全
大きな揺れを感じたら、まず身の安全を図り、揺れがおさまるまで様子をみる
【地震時及び直後の行動】
(2)素早い消火・火の始末
火を消す3度のチャンス
①小さな揺れを感じた時
②大きな揺れがおさまった時
③出火した時
(3)あわてた行動 怪我のもと
屋内で転倒・落下した家具類やガラスの破片などに注意する
(4)窓や戸を開け、出口を確保
小さな揺れの時、または揺れがおさまった時、避難できるよう出口を確保する
(5)落下物あわてて外に飛び出さない
瓦、窓ガラス、看板等が落ちてくるので注意する
(6)門や塀には近寄らない
屋外で揺れを感じたら、ブロック塀などには近寄らない
【地震後の行動】
(7)正しい情報・確かな行動
ラジオ、テレビ、消防署、行政から正しい情報を得る
(8)確かめ合おう 我家の安全・隣の安否
(9)協力し合って救出・救護
倒壊家屋や転倒家具などの下敷きになった人を近隣で協力し、救出・救護する
(10)避難の前に安全確認 電気・ガス
避難が必要な時はブレーカーを切り、ガスの元栓を締めて避難する

4.地震に対する10の備え
①家具類の転倒・落下防止をしておこう
・家具やテレビ、パソコンなどを固定し、転倒や落下防止をしておく
・怪我の防止や避難に支障のないように家具を配置しておく
②怪我の防止対策をしておこう
・避難に備えてスリッパやスニーカーなどを準備しておく
・停電に備えて懐中電灯をすぐに使える場所に置いておく
・食器棚や窓ガラスなどにはガラス飛散防止措置をしておく
③家屋や塀の強度を確認しておこう
・家屋の耐震診断を受け、必要な補強をしておく
・ブロックやコンクリートなどの塀は倒れないように補強しておく
④消火の準備をしておこう
・小さな揺れの時には、火の始末をする習慣をつけておく
・火災の発生に備えて消火器の準備や風呂の水の汲み置きをしておく
⑤火災発生の防止対策をしておこう
・普段使用しない電気器具は、差し込みプラグをコンセントから抜いておく
・電気やガスに起因する火災発生防止のため、感電ブレーカー、感電コンセントなど、
防災機器を設置しておく
⑥非常用品を備えておこう
・非常用品は置く場所を決めて準備しておく
・ジャッキやラジオなど、身の回りにあるものの活用を考えておく
⑦家族で話し合っておこう
・地震が発生した時の出火防止や初期消火など、家族の役割分担を決めておく
・家族が離れ離れになった場合の安否確認の方法や集合場所などを決めておく
・家族で避難場所や避難経路を確認しておく
・普段の付き合いを大切にするなど、隣近所との協力体制を話し合っておく
⑧防災環境を把握しておこう
・地域の防災マップに加えて、我が家の防災マップを作っておく
・自分の住む地域の危険度を確認しておく
⑨過去の地震の教訓を学んでおこう
・消防署などが実施する講演会やセミナーに出席し、地震の教訓を学んでおく
⑩知識・技術を身につけよう
・日頃から防災訓練に参加して、身体防護・出火防止・初期消火・救出・応急救護・
避難訓練・避難要領などを身につけておく

5.地震発生による世界の都市の危険度
ドイツの保険会社ミュンヘン保険による指数「リスク指数」で世界の大都市の災害危険度を格付けした。
ニューヨーク   「42」
ロスアンゼルス  「100」
サンフランシスコ 「167」
東京・横浜    「710」
学者・研究機関・保険会社などで、東京・横浜の大都市では数十万人の犠牲者が出ると予想している

6.ペットの防災対策
ペットを飼っている人は、家族同様の存在である。今、国内には犬1,300万頭、猫1,200万頭に達している。行政機関の防災計画には、ペットの扱いは全く示されていないが、避難所のペットフード、オリや囲いなどの対応も今後考慮されなければならない。被災地での心を癒し、明日への希望につながるペットの取り扱いは、緊急の課題である。

7.改めて知ったエレベーター停止の怖さ
全国で75万基のエレベーターが動いているが、首都圏での地震被害で約30万基のエレベーターが停止し、昼間であれば、閉じ込められる人は、約2万人を超すと予想されている。エレベーター技術者2,500人で30万基のエレベーターを始動させるには、何日もかかります。そのため、水・食料・簡易トイレ等をエレベーター内に設置しておく必要があります。

8.過去の大災害は繰り返される
東京都民は「安政江戸地震」(1855年11月11日)の怖さを知っておこう。

安政江戸地震は1855年11月11日(安政2年10月2日)午後10時頃、江戸川河口付近の直下で発生した。当時マグニチュード6.9で震度6と想定されている。川崎、横浜、松戸、熊谷などで倒壊家屋が発生し、成田、日光、木更津でも石積みや土蔵が倒壊している。また、新潟、青森、大阪でも揺れた。江戸では史上最大の激震であった。

【安政江戸地震の古記録】
《破窓の記より》は、「安政2年10月2日、昼のうちは曇り一時小雨、夜になって腫れ、北風が少し吹いていたが、大地震とともに、まず「火の始末」を確かめて外に出てみると半鐘の音がそこここから聞こえ、屋根の上に登ってみると東は本所、南東は深川、西は丸の内、京橋、北は下谷、東北は千住、吉原、浅草と、すべて火の海が見え、とくに丸の内、京橋あたりは火の粉が散らばっているようすが見えた」と火災が起きた時の様子について記している。さらに、被害に関しては「死者は1万人、3万人、あるいは5万人などいろいろな説が流れているが、およそ15,000人弱であろう。」と記している。
また、《時風録より》には、「地震の後しばらくして、火煙がにわかに天をおおい、夜もなお白夜のごとく、およそ30余箇所より猛火災が空を焦がし、これを防ぐ暇もなければ、ただ風のままに燃え移り・・・・・」と述べている(東京消防庁編《江戸の震災》)。
このように、100万都市江戸を襲って、市民を恐怖の底に陥れただけに、安政江戸地震に関する記録は種々残されていることが「日本災害史」から伺える。
来るべき「東京湾北部地震」は超過密化している東京直下で発生することになる。詳細にわたり地震被害の様子を残しているので、当時の怖さを知っておくことは十分に役立つものと思う。

9.富士山噴火と南海トラフ地震の連動
1707年10月28日、宋永東海地震、南海地震、東南海地震が発生し、東海から四国にかけてM8.6の激震と津波が襲い、甚大な被害を出した。そして、この地震の49日後に富士山の南東側山体から大噴火が起こった。この噴火により、麓の須足村では3mの火山灰が積も、関東地方も数センチ積もり、噴火は16日間続き、1708年1月1日にようやく停止した。当時の記録から、約500人が死亡し、1,800余戸の倒壊家屋を出し、その復興には、30年の歳月を要したと記録されている。
琉球大学の木村正昭教授は、来るべき東海地震の発生は富士山・大島・三宅島などの噴火を誘発させ、万が一富士山が噴火した時は、東京でも約4cmの灰が降ると言われている。降雪であれば、4cmなら、溶けてなくなってしまうが、火山灰は、そうはいかない。東京に満遍なく4cmの灰が積もったならば、その時点で全てが停止してしまう。交通機関がマヒすれば、仕事や流通に影響が現れ、次第に生命に影響が出てくる。火山灰はガラス状の形状となっているため、喉や肺へ入ることにより、生命の危険が多くの人に及んでくる。
また、火山灰に天空が覆われて、何日も太陽の光を閉ざしてしまう。こうなると、精神的なダメージも大きくなり、農作物をも破壊してしまう。
食糧の確保も困難な状況となり、餓えとの戦いが始まる。世界的に食糧が不足しているため、入手も困難となるだろう。それが重大な政治決断を迫られるだろう。かつてない恐怖の苦痛を国民的に味わうことになる。

あとがき

高度な技術や科学の発達は私たちの毎日の生活を向上させているが、そんな環境下でも、自然界の力には全く太刀打ちできない。これが現実である。しかしながら、地球的規模の異変があっても先人たちは、歴史の中で乗り越えている。
私たち人間の生命力もまた計り知れない生命力を持ち得ていることも事実である。私たちの持ちうる力と努力で生き延びる術を今一度考えておく必要があるのではないだろうか。